いつもご覧くださりありがとうございます。溝口将太です。知人から興味深いお話を伺ったのでみなさんにお伝えしたいと思います。
最近、電動車いすを利用しているコラムニストが世間を騒がせていますが、それに通じるものがあるかなと思いまとめました。
案件としては私の得意分野(?)であるタクシー絡みになるのですが、とある場所で付け待ち(客待ち)をしていたジャパンタクシーが車いす利用のお客様を乗車拒否した…というものです。
しかしこの乗車拒否、必ずしもタクシー側が悪いというわけではありませんでした。
ジャパンタクシーを運行している以上、身体に何かしらの障害等をお持ちの方がジャパンタクシーを選んで利用されるのは想定内のはず。社会通念上の観点でも正当な理由なく乗車拒否をすることは許されません。
ではなぜタクシー側が悪いわけではないと言えるのでしょうか…鍵を握るのは重さ100kg超えの電動車いすと当該ジャパンタクシーが備えるスロープの耐荷重性でした。
ピンク色のUDタクシーステッカー
ジャパンタクシーには基本的に車体左側の前面・側面・後面にUDタクシー認定のステッカーが貼られています。
ジャパンタクシーに貼られているUDタクシー認定ステッカーの多くは緑色ですが、最近はピンク色のステッカーが見られるようになっています。
緑色のステッカーは『備え付けのスロープの耐荷重性は200kg』であることを示していますが、ピンク色のステッカーは『備え付けのスロープの耐荷重性は300kg』とされています。
画像出典:国土交通省
ステッカーの『☆マーク』は、スロープの傾斜角度や乗降口が低く乗降しやすいといった構造上の評価を示しています。
『UDTAXI2020』は『ユニバーサルデザインタクシー2020』と読みますが、ジャパンタクシーそのものの性能に変更点はありません。この場合はあくまでUD2020規格に適用した耐荷重性300kgのスロープを備えているという意味に留まります。
実質的に2020年以降に製造されたジャパンタクシーはこのピンク色のステッカーが貼られているはずです。
安全第一に代わるものはない
話を戻しますが、当該のジャパンタクシーは緑ステッカーのジャパンタクシー(スロープの耐荷重性は200kg)で、乗客は電動車いす(推定重量は100kg以上)を使用。付き添いの方と車いす利用者・電動車いすを合わせると総重量が200kgを超えるというものでした。
もちろんストレートに体重を聞くわけにもいかないのでしょうが、スロープの耐荷重性を理由に利用できないことを伝えたそうです。
件の乗車拒否そのものは正しい対応と言えます。
鉄道もタクシーも物流も他の交通機関も同様ですが、安全第一に代わるものは存在しません。残念ながらそこを勘違いしている利用者が多いのも事実で、こんなことを言っては怒られるかもしれませんが、身体に何かしらのハンデを背負っている方からそういった声が大きいのも事実です。
仮にこの乗務員が「ちょっとくらい重量がオーバーしてもいいだろう」と応じ、なにかしらのショックでスロープが破損、利用者に怪我でもさせてしまったらそれこそ大事になります。おそらく交通事故として扱われることになるでしょう。
場合によっては重大事故扱いになり、個人はもちろん会社・家族にまで大きな影響を及ぼす可能性があるのです。それは理解してほしいと思います。
ですので、何度も言いますが安全第一に代わるものなどないのです。
ちなみに、この乗車拒否が発生したことを伝えたのは他社のタクシードライバーだったそうです。正義感に駆られたのかどうかはわかりませんが他社への嫌がらせの可能性もあります。
あえて乗務員側の改善点を指摘するとしたら、(迎車代が発生することを伝えた上で)耐荷重性300kgのスロープを備えたジャパンタクシーの配車依頼を『提案』すること…でしょうか。
『提案』というのは配車依頼はできれば利用者側が直接行うことが望ましいからです。理由の一つとしては間に第三者を挟むことになり、配車車両に万一のトラブルが発生した際、利用者への連絡等がスムーズに行えなくなるからです。
私の過去の話
余談ですが、私が過去にジャパンタクシーで乗務したある日…某有名繁華街で車いす対応を求められました。
しかしその場所は歩道と車道の段差が特に大きく、人や車両も多く行き交う場所なので「ここは危ないので安全な場所でご利用ください」と勧めると、車いすの方(女性)が「私はここで乗りたい」と言い出しました。
なんてわがままな女なんだ…と正直思いましたが、連れ添いの旦那さんがとても気まずそうな顔をしていたので、「万が一怪我をされても責任は負えませんよ?」と伝え、了承をしていただいたので応じることにしました。
車両と歩道をスロープで繋げたわけですが、車道との段差があるのでスロープはもはやスロープではなく、ただのつり橋のような状態でした。「怖い怖い怖い」と言いながら旦那さんに車いすを押されて乗車する女性。
私自身もガタガタ揺れるスロープを支えましたが、正直利用方法に疑問を感じましたね。
まぁ今だから言える話ではありますが、身体が不自由な方のわがままは多い…というか目立ってしまうと思います。わきまえろとは言いませんが安全第一を理解した上で利用してほしいですね。
しかし、その場所は身体に不自由ない方は問題なく利用できる環境・条件でもあったので、「自分も同じように利用したい」という気持ちは理解できます。
まとめ
確かに『バリアフリー』は全ての人がバリア(障壁)なく移動できる社会の実現を理想とした考え方ですが、全ての人にあてはめることができるかというと…現実的には難しい考え方でもあるのです。
例えば私の過去の話…そこは大きな段差があったわけですが、確かに車いす利用者にしてみれば『障壁』ですが、白杖を使用する視覚障碍者にとっては重要な境目(特に車両の多く行き交う場所において)だと聞いています。
(ちなみにこのような双方の意見の解決点として、20㎜の段差を設けるのが望ましいと見出したそうです)
理想は常に持ち続けることは大事だと考えています。しかし理想を実現させるためにはあらゆる角度から意見を集め、検証をしなくてはなりません。また実現させるための費用も莫大なものになるはずです。
あるコラムニストからのJR東日本及び来宮駅の一件に関してもそうです。以前からエレベーターの設置が決まっているそうですが、あのような問題提起はナンセンスだと思います。
この件に関してはまた私の考えも交えてまとめたいと思いますが、移動における最も大切なことは(バリアフリーも重要ですが)安全第一であり、全ての人どうしの相互理解であるということをここでお伝えさせていただきます。
電動車いすでジャパンタクシーを利用の際は、お手数ですがピンク色のステッカーのジャパンタクシーをご利用ください。