いつもご覧くださりありがとうございます。溝口将太です。
ここ数日の間でライドシェアに対する大きな動きが報じられています。起点となるのは3月7日…全国から集まるタクシー関係者・労働組合(主催者発表によると運転手500人、タクシー車両400台)が霞が関にある経済産業省を囲み大規模デモを行いました。
この動きに対してソフトバンク孫正義社長の発言が以下のようい取り上げられています。
アメリカのライドシェア最大手「Uber」へ出資するソフトバンクの孫正義社長は「(ライドシェアが法律で禁止されている)そんな馬鹿な国の日本があるという状況の中で、過去を守りたい、未来を否定する。もう考えられない状況だ」
参考:Yahoo!ニュース
このライドシェア関連については後日ブログにまとめたいと思います。
一方で政府は3月7日の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)において来年度にはタクシーの相乗りを解禁するする方針を固めました。これについて安倍首相は以下のように述べています。
安倍総理大臣:「タクシー事業についてはITの活用も含めて相乗りの導入により、利用者が低廉な料金で移動することを可能にする」
政府は7日の未来投資会議で、知らない人同士がアプリでマッチングされて乗車距離に応じて料金を割り勘する相乗りタクシーを来年度にも全国で認める方針を示しました。利用者にとっては料金が半額ほどになったり、待ち時間が減ったりするメリットがあります。ただ、解禁すれば1台あたりの利益が減るとしてタクシー業界は反発しています。参考:Yahoo!ニュース
ご覧の通りこれにもタクシー業界は反発の声を上げています。3月7日はタクシー業界にとっては将来の不安を煽られる1日となったと言えます。
私はライドシェア解禁には100%賛成していますが、タクシー相乗り関しては50%程度です。今回はタクシー相乗りに関してお話しをしたいと思います。
タクシー相乗りとは
そもそも日本ではライドシェアと相乗りはほぼ同じ意味と認識されています。ただ相乗りにもタイプがあり、1台の自家用車に複数人乗車する相乗り(これを促進されるサービスがライドシェアアプリ)と、1台のタクシーに行き先・方角が共通の客同士が乗車する相乗りと分類できます。
メリットは利用者が安く移動できるということです。デメリットは基本見知らぬ同士の、人間関係0からのコミュニケーションを図ることになりますのでトラブル発生の可能性が懸念されていることです。
メリットを図面化させると以下のようになります。
タクシーを1人で利用するよりも、2人で利用する方が安く利用できる
参考:日本経済新聞
乗務員目線で見ると、これは1台当たりの利益が減ってしまうことを懸念しています。さらに言えば走行距離が増える割には収益が上がらないということを意味します。
タクシーが1日に走行できる距離は原則として決められています。稼働時間(労働時間)も労働基準法に定められていますので決まっています。つまりいかに効率よく数字を積み重ねるかが大事になるわけですが、その結果が多くの方がイメージするタクシーの運転の荒さに繋がっていると言えます。まぁほかにもありますがこれは別の機会にお話します。
2018年1月22日から同年3月11日、大和自動車交通グループ4社649台、日本交通グループ11社300台によるタクシー相乗り社会実験が実施されました。
その結果を踏まえての今回のタクシー相乗り解禁ということになりますが、相乗りを実現させるためには利用者同士のマッチングが必要不可欠です。そのマッチング方式が大和自動車交通と日本交通に相違があったことをご存知でしょうか?
大和自動車交通の「この指とまれ」方式
大和自動車交通のタクシーは『大和自動車交通タクシー配車』というアプリを用いて1か所の乗車地で、同方向の目的地に向かう人を募集してマッチングする「この指とまれ」方式でした。
相乗り可能人数は3人まで。運用可能エリアは東京駅八重洲口や神田駅南口、錦糸町丸井前など、東京駅以東を中心に30カ所と決められていました。7日前から運送開始時間45分前まで申し込みが可能で、運行開始25分前に相乗りを確定させます。アプリ上で相乗り乗車券を発行されるので乗車時は乗務員にこの画面を提示します。
相乗り確定後のキャンセルは相乗り運賃全額を収受され、アプリ決済なので事前にクレジットカードの登録が必要です。
こちらは私は好印象でした。乗務員の利益面を軸にして見ると微妙な印象ですが、少なくともタクシーに乗車する前から乗客同士のコミュニケーションは発生していますので、教務員の負担増しは最低限で済むのではないかと思いました。
日本交通の「フリーマッチング」方式
一方、日本交通のタクシーは『相乗りタクシー』というアプリを用いて乗車地、降車地を自由に選択して同方向に向かう人をマッチングする「フリーマッチング」方式でした。
相乗り可能人数は2人まで。乗車場所はどこでも設定可能でした。乗車希望時刻の1時間前から申し込み可能でマッチング対象が見つかり次第相乗りが確定します。相乗り可能人数は2人までという理由は、利用者が隣り合わないよう助手席と後部座席に一人ずつ配席するという方式を採用していたからです。
大和自動車と同様に相乗り確定後のキャンセルは相乗り運賃全額を収受され、アプリ決済なので事前にクレジットカードの登録が必要です。
こちらは反対でした。安全第一を掲げるべき乗務員の負担増しが尋常ではなかったからです。
A地点(最初の乗客を乗せる)⇒B地点(相乗り相手との待ち合わせ場所)へ迎えに⇒C地点(片方の目的地)⇒D地点(もう片方の目的地)
一番の問題は⇒の部分です。乗客同士のコミュニケーションが0のまま車内に乗り込むことになります。着席位置こそ助手席と後席に分かれていますが、その雰囲気は微妙なもの。B地点に向かっている間にも最初の乗客は少なからず不安な気持ちを抱えているでしょう。B地点の方も同様です。
乗務員はそれをカバーする必要が生じます。タクシー会社が主導で行う以上、営業所もそのリスクを被ることになります。
参考資料:Response
乗務員の不利益になってはいけない
私が反対する理由は乗務員が安全性を損ないながらも大きな不利益を被るのではないか…その一点に尽きます。
お伝えした通り、タクシーは1日の稼働距離や労働時間が決められており、近年では特に厳しく管理されています。そのため乗務員は1日の稼働効率を重視します。
それは乗務員都合だと言われればその通りなのですが、利用者の都合で過度なマイナスまで被る必要はないのではないでしょうか。
でも安く移動したい気持ちもわかります。だからこそライドシェア解禁にも賛成しています。移動の選択肢を増やすことはいいことですから。
ここで1日の稼働可能距離、労働時間を記載しておきましょう。以下は東京特別区の場合です。
1日の走行可能距離…365キロです。高速自動車国道、有料道路は走行距離加算の対象外ですが首都高速は対象内です。またETC利用不可の有料道路、無料の自動車専用道路(保土ヶ谷バイパスなど)はシステム上対象外とされています。
1日の労働時間…会社により差異があるかもしれませんが、20時間前後と見て間違いありません。
この内容でどう思われるかはわかりませんが、流し重視(空車で走りながら乗客を見つけること)の乗務員にとっては距離は足りないと言われています。営業所から出庫・帰庫も含まれますので意外と距離を走ってしまうのです。
ですので効率を重視する気持ちも理解はできます。相乗りは言ってしまえば経由です。内容次第ですが基本的に経由は効率が下がります。
さらに乗務員が主張したいのは、本来は2台で運用できる対応を1台で対応することになるわけですので反発の声が挙がるのも無理はありません。
タクシー会社を介さない相乗りアプリ
タクシー相乗りの解決策がこちら。私の知っている方が開発者です。これなら実質相乗りですが、乗務員にとってはただの『経由』です。https://t.co/K6IMfvcyba
— 溝口将太 (@mizoimp) 2019年3月8日
こちらは私のツイートです。タクシードライバーは基本的に乗客を選ぶことはできません。グループを乗せた時もそれが同一目的地なのか経由発生なのかも乗せてみなければわかりません。
私がツイートで紹介しているアプリ、nearMe.はタクシーに乗車する前にマッチングを成立させ、利用者が落ち合った後にタクシーを利用するという相乗りマッチングサービスです。
乗務員から見ればタクシーを利用するグループが乗り込み、結果経由であるというありふれた対応でしかありません。
料金決済もタクシーが介入することはなく、nearMe.のアプリ内決済となります。具体的には経由地で降りる人が最後にタクシー料金を精算する人にアプリ内で支払いを済ませるという方式です。料金はアプリ内で自動算出されます。ルートも自動算出されますので乗務員に希望ルートとして伝えればその通り走行できます。
一番トラブルになるであろうお金に関する部分を乗務員がカバーする必要がないのは大きな利点と言えます。また、コミュニケーションもタクシーに乗車する前に成立しているはずです。まさか挨拶も済まさずに共に同じタクシーに乗る利用者はいないでしょう。
私は現状、相乗りはnearMe.方式で十分なのではないかと思っています。ちなみにnearMe.は私の知っている方が作ったアプリですのでぜひ利用してみてください。
まとめ
こうして見ると今回のブログはタクシー乗務員側の立場に見え、私がライドシェア解禁を賛成してることに対して違和感を持たれる方も多いと思いますが、私が賛成する理由には基本的には経済の発展の可能性に重きを置いています。
今回はタクシー乗務員の利益という面に重点を置いてまとめてみましたが、利用者の選択肢が増え、利便性が向上することは素晴らしいと思います。
ライドシェアに賛成する理由などは後日まとめますが、タクシー業界自体も変わる必要があるのも事実です。自分たちの利権や過去ばかりを守るのではなく、前へ前へと進む時間の流れ『時流』をしっかり受け止め、選ばれるサービスの構築に努めて頂きたいと思います。