いつもご覧くださりありがとうございます。溝口将太です。
移動しながら仕事・作業を行う…通勤電車内でもある程度の業務を行っている方は目にしますが、『快適な移動』という付加価値が提供された環境下ではどうでしょう?
先日、JR東日本の普通列車としては初めてグリーン車にWi-Fi環境が提供された「E235系1000番台」をご紹介しました。多少の振動は気になるかもしれませんが、今後の移動の在り方の可能性を感じました。
今回はバスのお話です。東急バス株式会社より、
『バスで快適テレワーク!シェアオフィスバス「Satellite Biz Liner」を実証運行します』
と発表されました。
バスで目的地に向かいながら仕事をする…動くシェアオフィスがコンセプトの「Satellite Biz Liner」。
実証運行期間は2021年2月16日~4月28日までの平日のみの運行になります。
今回はこの「Satellite Biz Liner」をご紹介します。
田園都市線と並走する「Satellite Biz Liner」
Satellite Biz Linerの面白いところは新羽(にっぱ)営業所と東京駅を結ぶところです。新羽営業所は新横浜に近い横浜市港北区ですが、基本的には田園都市線とほぼ並走するルートを走行します。
つまりメインターゲットは田園都市線ユーザーであり同時に『新たな移動の価値』の提案先でもあるということです。
詳しい時刻表は後述しますが、東京駅へ向かう際、新羽営業所を出発した後は田園都市線の市ヶ尾駅・たまプラーザ駅を乗車専用として渋谷駅・東京駅へと向かいます。帰路はその逆です。
Satellite…サテライトと読むと思いますが、真っ先に思い浮かぶのが「衛星」だと思います。健全な男子は「サテライトキャノン」かもしれませんが、私もサテライトという言葉はサテライトキャノンから学びました。
サテライトという言葉は転じて「遠隔地にある事業所」という意味合いで使われるそうです。つまりSatellite Biz Linerは『事業所としての役割を担うバス』をイメージしています。
車内設備
観光バスタイプの車両なので快適性は高いと思います。車内は優しい明りに優しい配色で落ち着いたカジュアルモダンを思わせる空間ですね。
乗車距離は最大で約43㎞と一見大した距離ではないのですが、乗車時間は約145分と2時間を超えています。
運行ダイヤとルートを追ってみると、確かにそれくらいの時間を要してしまうタイミングであることがわかります。
2時間を超えるバスの乗車はちょっと大変。広々としたシートと化粧室の存在は必要不可欠と言えるでしょう。
パソコン・タブレットで作業を行う乗客向けに作業台(ヨギボーのTraybo2.0)を車内レンタルで利用できます。18台用意されているそうです。Wi-Fiも完備されています。
充電設備に関しては直接伺いましたが、各座席にUSBポート(USB Type-A)を設置。残念ながらAC100Vコンセントはありません。
時刻表
たまプラーザ駅から渋谷駅までは高速道路を走行します。田園都市線の利用客にアピールした実証運行が面白いのですが、たまプラーザ駅についてはこのエリアの東急ブランドユーザーを無視できないのでしょう。
市ヶ尾駅は各駅停車しか止まらない駅ですが、横浜市営バスを絡めると東急線における港北ニュータウンエリアの最寄り駅の一つでもあります。周知さえできていれば案外喜ばれるかもしれません。
市ヶ尾駅は御殿場・河口湖などを結ぶ高速バスが同社より運行実績がある(現在は新型コロナウイルス感染症対策により運休中)ので、Satellite Biz Linerの市ヶ尾駅経由も容易なはずです。
渋谷・東京方面行き
新羽営業所・市ヶ尾駅・たまプラーザ駅は乗車専用、渋谷駅・東京駅は降車専用となります。終点の東京駅では東京駅丸の内南口で降車することになります。
たまプラーザ・市ヶ尾・新羽方面行き
東京駅・渋谷駅は乗車専用、たまプラーザ駅・市ヶ尾駅・新羽営業所は降車専用です。
他の手段との比較
道路状況により大きな遅延が発生する場合がありますが、返金対応などは一切行わないとしています。鉄道のようにダイヤに正確というのは難しいのかもしれません。
そこで他の移動手段と比較してみましょう。
まず新羽営業所ですが、東京駅に行かれる方は間違いなく
新羽 ー【横浜市営市営地下鉄】ー 新横浜 ー【東海道新幹線】ー 東京
になると思います。所要時間は約40分・移動費用は1,590円(新幹線は自由席特急券)ですのでSatellite Biz Linerより90分以上早く700円ほど安いです。
渋谷駅へは新羽営業所からバスで綱島駅、綱島からは東横線で1本です。所要時間は時間帯により異なりますがトータルで45分前後でしょう。
田園都市線の各駅ですが、渋谷へは当然1本。さらに東京を大手町とするならば(東京駅南口からは離れていますが…)、田園都市線各駅から半蔵門線への直通列車1本です。所要時間は時間帯により異なります。
参考までに、たまプラーザから渋谷までは通勤時間帯・急行で約30分です。
つまりSatellite Biz Linerは相当限られた客層への提案になる可能性が高いということになります。そもそもたまプラーザから渋谷まで1時間以上を要するなど「移動手段としてはナンセンスだ」と言われたら返す言葉もないでしょう。
それが逆に東急の根拠を秘めた自信の表れのような気がします。
予約・支払い方法と運賃
予約と支払い
予約・支払いは原則インターネットで行います。予約受付サイトは主に二つです。
・DENTO LINE公式アカウント(こちらからどうぞ)。『定期券割引あり』とありますので間違いなく田園都市線ユーザーをターゲットにしていますね。基本的にはこちらで予約・支払いとなるでしょう。
・発車オーライネット(こちらからどうぞ)。高速バス及び定期観光バスの予約サイトです。
利用希望日の当日、空席がある場合は予約がなくても乗車は可能だそうです。運賃は現金または交通系ICカードで直接支払います。
運賃
「遅延等で発生した損害等については、その責は一切負いかねます」としています。道路を使うバスである以上、ギリギリのスケジュールになるような利用は控えた方がよさそうです。
東急が提供するLINE公式アカウント「DENTO」はこちらからどうぞ。
乗り場案内
各リンク先で乗り場案内図を表示できます。
まとめ
田園都市線には他社線で運行されているような着席保証型通勤ライナーの存在がありません。
あえて言えば大井町線の「Qシート」が長津田まで直通をしている点を挙げることもできますが、二子玉川・溝の口・鷺沼は降車専用駅、たまプラーザから先はフリー乗降駅(座席指定券無しで利用可能)なので田園都市線としての着席保証はありません。しかも下り線のみの運行です。
そもそも田園都市線は半蔵門線・東武線との直通運転や渋谷駅の構造上においてもライナー列車の新設は難しいでしょう。しかしラッシュ時は2~3分毎に列車を走らせたり、大井町線直通を除くすべての列車が10両編成だったりと頑張っています。
それでも混雑率は全国の私鉄トップクラス。そこでほぼ並走している国道246号線・東名高速・首都高速を活用することにしたのでしょう。しかしこの並走している道路は日本の大動脈路線。日本屈指の渋滞路線でもあります。なので所要時間が2時間を超えているわけですね。
これは私たち利用者が働き方を改めるべきなのかもしれません。利用者に合わせた移動手段の構築も大事ですが、提供された移動手段を活用することも今後は求められていくべきでしょう。
Satellite Biz Linerは2021年2月9日より予約を開始、2月16日より運行開始です。私も機会を見つけて利用してみようと思います。
【参考出典】
・東急バス プレスリリース
https://www.tokyubus.co.jp/news/002340.html
https://www.tokyubus.co.jp/news/Satellite_Biz_Liner_release.pdf
・E235系1000番台グリーン車