電動化の波にタクシー業界はどう応えるか

2021年1月25日

いつもご覧くださりありがとうございます。溝口将太です。

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

今回は2021年最初のブログ、「電動化の波にタクシー業界はどう応えるか」をテーマにまとめてみたいと思います。

2030年代半ば、日本政府が進める『2050年カーボンニュートラル』の一環として日本国内でもガソリンエンジン車(おそらくディーゼルエンジン車も)の新車販売が禁止される見込みです。

新車販売が認められるのは『電動化』を満たした車両のみとなります。

電動化 = EVというイメージが先行してしまうと思いますが、日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車)が2020年12月17日に「電動化 = EVと認識されるような報道を改めてほしい」との見解を示しました。

日本国内ではモーターが備わったHVであればエンジン搭載車の新車販売は認められます。マイルドハイブリッドについても同様です。

しかしカリフォルニアなどでは2035年までにエンジン搭載車そのものが認められなくなる見込みです。厳しいですね。。

日本国内では2030年代半には純内燃機関のクルマの新車販売は禁止される見込みですが、一方でタクシー業界は電動化の流れをどう受け止めているのかを独自考察を交えてお伝えしたいと思います。



基本的には電動化の条件は満たしている

東京特別区(23区及び武蔵野市・三鷹市)におけるタクシーの登録台数は法人・個人を合わせると4万台を超えています。これは全国のタクシー登録台数の約20%を占めていると言われています。

その分、電動化への対応もいち早く注目をされるのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、東京特別区におけるタクシーは電動化の条件をほぼ満たすことになると考えられます。

それは何度かこのブログでもお伝えしている「JPNタクシー」の存在があるからです。

基本的に法人がタクシーを新車として購入するとほぼJPNタクシー(と日産の「NV200バネット」)に絞られてきます。

まぁ最近では「シエンタ」「カムリ」も台頭している見方もあるのですが、この3車種はトヨタ自動車ご自慢の『THSⅡ』、あるいはそれをベースとしたハイブリッドシステムが実装されているからです。

「クラウンコンフォート」も稼働はしていますが新車販売は打ち切られており、部品供給期間もそう長くはないので自然と淘汰される運命にあります。

ですので大筋としては少なくともタクシー業界が車両の電動化については神経質になることはほぼないと言い切れます。



そもそもEVは東京特別区においては現実的ではない

そもそも1日300㎞以上を走行する東京のタクシーにEVは適していると言えるのでしょうか。

画像出典:日産自動車

こちらは日産「リーフ」ですが、航続距離は62kWhバッテリー搭載車で458㎞(WLTCモード)です。ストップ&ゴーが多い東京、専用の電装品を数多く備えるタクシー車両として使用すると航続距離は大きく縮むでしょう。

充電は急速充電で60分程(62kWhバッテリー搭載車)を要します。これで80%の充電です。やはりタクシーとしては扱いづらいですよね。タクシードライバーにとって充電時間に約1時間というのは致命的なロスと言えるのです。

このことからも、少なくとも東京などの大都市ではEVよりもHVの方がタクシー車両としては都合がよく、その要件もほぼ満たしていると言えるのです。もっとも、LPGスタンドも減少傾向にあるので油断はできないとは思いますが…。

しかし、EVタクシーが本格的に稼働されないかというとそんなこともないかもしれないのです。



自動運転タクシーで限られたエリアでの稼働

時は2年以上前に遡りますが、2018年8月27日 ~ 9月8日の期間に日の丸交通を中心とした自動運転タクシーの実証社会実験が行われました。

実施区間は東京・大手町 ~ 六本木。万一に備えてドライバーが運転席に同乗をする『自動運転レベル3』と呼ばれる段階の社会実験です。

車両こそEVではありませんでした(エスティマハイブリッドだと記憶しています)が、社会実験ではありましたが世界初の自動運転タクシーとして話題になりました。

この運用方式ならEVタクシーは大いにアリだと思います。

理由は限られた区間、限られたルートでの走行になるので実走行距離が容易に管理できるからです。運転席への同乗を必要としない『自動運転レベル4』でもほぼ同じことが言えます。

まだまだ法整備は必要ではありますが、例えば湾岸エリアでのEV車両タクシーが地域の移動手段、観光における移動手段として提供されると未来感がアピールできそうです。

ちなみに豊洲エリアでも自動運転の実証実験が行われたことがあります。

では地方の場合はどうでしょう?



地方での動向はどうか

東京や大阪などの大都市では1日の走行距離が300㎞を上回ることも珍しくありません。

しかし、地方のタクシーはそうではありません。病院や駅などの付け待ちがメインで、依頼があった場合は自宅などへ迎車に向かう…基本的には街中を空車で流すということが少ないのが地方タクシーの特徴です。

こういった地域ではEV車両がむしろ向いていると言えるのではないでしょうか。

待機場所付近には充電できるスポットを設置し、まだEVが浸透していない今だからこそEV車両の魅力を利用者に伝えることもできます。

しかし1タクシー企業が簡単にEVを購入できるわけではありません。未だにクラウンコンフォートがメインの地方のタクシー会社が電動化への対応を行うとするならば、東京などで運用されたJPNタクシーを中古で購入することになるはずです。

これは大都市で運用されるJPNタクシーの代替のタイミングと一致することを意味します。そもそもクラウンコンフォートも大都市での役目を終えたタクシーの第二の活躍の場であることがほとんどなのです。

しかしコロナ禍の真っ只中、大都市のタクシー会社も苦戦を強いられており、東京のある老舗タクシー会社が1月13日付で廃業するという情報も寄せられました。

ある程度余力のあるタクシー会社は保有車両のうち稼働台数を減らす「休車」という措置をとっています。

つまりナンバーを外してしばらく寝かせておくということです。稼働車がなんらかの事情で稼働できなくなった時のためにナンバーを外さないままで寝かせている可能性もあります。

こうなると代替サイクルは長くなりますので、地方へのJPNタクシー導入が遅れる可能性も否定できません。

私の案としては、地方においてはEV車両をリースという形を取りつつも自動車メーカー・自治体などと連携し合って観光誘致の一環としてEVタクシーを運行してもいいのではないかと思うのです。



まとめ

そういえば昨年末に、「自家用車としてのLPG車は広まらないのですか?」という質問を受けたのですが、それはないと断言できます。

理由は「LPGタンクのメンテナンスを要すること(6年毎の定期点検が義務化されています)」「マージンを取っているのかそれほど航続距離にも優れていない」「開発側としてはパッケージングに大きな制約を要する」そして何より「LPGスタンドが少なすぎる」からです。

根拠はありませんが、おそらく環境性能もレギュラーガソリンほどではないでしょう。

日本政府が掲げた『カーボンニュートラル』。その一環として2030年代半ば(おそらく2035年になると思われます)に純内燃機関の新車販売を禁止するわけですが、それが本当に世界にリードを示す政策なのか正直疑問です。

私は適材適所で人々の移動、経済活動をより環境負荷の少ない形で実現できてこそが理想的なリードではないかと現時点では考えています。

今回はタクシー車両をメインにまとめましたが、おそらく一番頭を悩み抱えているのは「ハイエース」などで日本国内を走り回る商用車オーナーです。

「軽油」という価格が抑えられた燃料に「ディーゼルエンジン車」という耐久力、トルクに優れた特性のあるバンだからこそ日本の物流経済を支えている事情もあるはずです。単純にマイルドハイブリッド化すればいいという話でもないでしょう。

世界のことも大切ですが、日本国内にもよく目を向けてトータルで考えて政策を行ってほしいと願わずにはいられません。