いつもご覧くださりありがとうございます。溝口将太です。
今回は2020年7月24日(金)~8月9日(日)開催のオリンピック、同年8月25日(火)~9月6日(日)のパラリンピック開催期間中の実施を検討されている首都高速のロードプライシングについてまとめたいと思います。
はっきり言っていい話ではありません。私も含めみなさんが利用している首都高速の料金を値上げしようとしているわけですから…。
そこで首都高速の利用料金値上げで何が起こるのか?他にどのような案があるのかを記載します。
ロードプライシングとは
聞き慣れない方も多いと思いますので、「ロードプライシング」という言葉から説明します。
ロードプライシング…ある特定の道路に通行料を課金、あるいは既存の有料道路の料金を時間帯で変動させることにより意図的にクルマの交通量を調整する働きを意味します。
上記の通り仕組みは大きく二つに分けられており、
①一般道路等に料金を設ける「課金型ロードプライシング」
②有料道路における料金を時間帯で調節することで交通量を調整する「料金調整型ロードプライシング」
と区別されています。
前者(①)は主に諸外国で用いられている道路交通量の調整方法ですが、日本において検討されているのは首都高速…つまり有料道路における料金を時間帯で調節するという働きなので後者(②)にあたります。
それでは首都高速に焦点を当てての考察に移ります。
検討されている首都高ロードプライシング
現在の首都高速の利用料金、みなさんは把握していますか?
首都高速株式会社へ確認したところ、ETC装着の普通車の場合は0.1㎞毎に10円単位で加算されている仕組みです。下限料金300円(4.4㎞まで)、上限料金は1,300円です。これに都心流入割引などの例外が適用されています。
現金での場合は一部例外を除き1,300円です。
今回の首都高速におけるロードプライシングはここを見直そうとする働きです。最近まで言われていたのが「大会関係者の輸送が多い時間帯は現行料金の2倍程度とし、輸送が少ない時間帯をその分値下げする」という案でした。つまり最大で1300円の値上げという見方です。
これはつまり「大会開催期間における開催時間中は首都高速の通行料が2倍程度になる」ということです。
ところが雲行きがさらに怪しくなってきました。多媒体の引用ですが、
関係者のなかで最大3000円ほど上乗せする案が浮上している
参考記事:乗り物ニュース
というものです。
首都高値上げで何が起こるか?
現時点では物流関連の車両は値上げ適用の範囲外とされそうですがそれは当然のこと。日々の生活を支えているとも言える物流業界に多大な負担を負わせるということは、必ずその余波が消費者に跳ね返ってきます。「なんのための東京五輪だよ!」と怒鳴りたくもなるでしょう。
仮に五輪開催期間中に首都高値上げが実現されたとしましょう。東京で開催する以上、大会競技の時間が夜中になるはずもありません。値上げ対象時間はまさに経済活動の真っ只中ということです。何が起こるのか?
ほとんどの方がお判りだと思います。都心一般道の大渋滞です。
特に首都高速に面している一般道…つまり国道・都道の渋滞は悲惨極まりないものになります。
ここからは私が元タクシードライバーだから断言できるのですが、一番大きな影響を受けるのは六本木通り~国道246号線です。
この路線、日中は常に混雑しています。特に渋谷エリアは都市開発のために慢性的な渋滞を常に引き起こしています。六本木交差点も詰まりやすい場所です。
その六本木通りから国道246号線の真上を首都高速(首都高3号渋谷線)が走っています。今は数百円を払ってでも早く行けるならと首都高を利用していたドライバーも、料金が倍、あるいはそれ以上になれば下道を選択するのは自然な流れです。
さらにこの区間はタクシーも高速を利用していました。理由はやはり渋滞関連です。
当たり前ですがタクシー利用者は一般道路の混雑を特に嫌います。「時間メーター」が作動して運賃が増々上がってしまうからです。これを逆手に取った利用方法が首都高速の活用です。首都高速を含めた有料・高速道路利用時には「時間メーター」は停止します。
つまり純粋に距離だけの運賃計算となりますので、一般道での混雑・信号待ちで運賃が上がるのなら首都高代を負担してでも目的地に向かった方が結果早く、安くタクシーを利用出来るのです。
乗務員もこれを理解しているのでお客様には首都高速の利用を促しています。
結果的に一般道路と首都高速のある程度の使い分けが成り立ち、一般道路の混雑軽減に繋がっています。
しかし首都高速の料金が倍になれば話は変わります。今まで首都高速を利用していたお客様は首都高速を嫌がり一般道での運行を選択するでしょう。
仮に結果高くなってしまうとしても、既存の利用料金が倍以上になるというのは躊躇してしまうものです。ドライバー・乗客共に慣れの期間がどうしても必要です。これは2016年4月の首都高速の料金改定にも見られた動きでした。
2019年3月(2018年度内)までに首都高3号渋谷線下りに『渋谷入口』が共用開始予定ですが、これに伴い六本木通り下りの渋谷2丁目交差点~渋谷警察署前手前の区間が3車線から2車線になりました。裏目に出ないことを願うばかりです。
考えられる他の対策
まずタクシーと乗り合いバスは貨物車両と同様に首都高値上げから除外すべきです。
そもそもオリンピック会場にクルマで向かうこと自体がある意味で無謀と言えます(パラリンピックは各々事情もあると考えますので特に言及は致しません)。
ではどのような代替案が考えられるか?
公共交通機関を利用すればよいと思います。私は東京五輪は日本の自動運転技術お披露目の場だと思っています。自動運転技術を活用したチャーター便が実現していてもおかしくありません。
例えば東京駅~大会エリアへの無人チャーター便。自動運転レベル4で運用可能です。万一に備えるのであれば運転席にドライバーが控える自動運転レベル3でも可能です。警視庁が自動運転レベル3に対応した道路交通法改訂を2020年前半に間に合わせようとしていますので現実的だと言えます。
ですが個人がクルマの活用を無視するのも非現実的です。
そこで「パークアンドライド」を提案します。
こちらは鎌倉市が取り組んでいるパークアンドライドです。鎌倉にクルマで観光に向かう際、鎌倉中心部までクルマで行くのではなく、鎌倉地域の周辺にある既存の駐車場に駐車し、江ノ電等の公共交通機関に乗り換えて鎌倉中心部などの目的地に向かう方法です。
この例を活用・拡大します。
日本全国各地から人やクルマが集まる可能性が高いので、駐車場エリアは東京だけではなく、神奈川・千葉・埼玉との連携も行います。
これらの移動手段を総合的に提案・決済可能とするのがMaaSです。一人一人の移動手段を段階刻みで決済を行うのではなく、全ての移動手段を一括決済できればよりスムーズな移動を可能にします。
各鉄道会社とも連携を図り、単に首都高速の交通量を調整するのではなく、首都圏の交通機関全体が一丸となってこの課題に取り組むべきだと考えます。
当然ライドシェアの活用があってもいいでしょう。一人1台のクルマで向かうよりは数名で1台のクルマで向かう方が事故のリスクは下がり、環境にも優しく、渋滞発生率も下がります。ライドシェアがドライバーの収益に反映されても貢献度を考慮すれば決して悪ではありません。
ですので今の内にライドシェアは市民権を得ていなければなりません。反対団体と争っている場合ではなく、あと500日程度で迎える東京五輪に向けて肩慣らしをしておく必要性を訴えます。