豊洲エリアで自動運転実証実験

2021年6月3日

2018年9月14日(金) ~ 20日(木)の間で豊洲エリアにて自動運転実証実験が行われました。

今回はレポートと考察をお届けしたいと思います。インターネット上には各報道機関がレポートを挙げておりますが、私のレポートではまだ見られていない視点でのまとめとなっておりますのでぜひご覧ください。

【実証実験の概要】

1⃣走行日時

9月14日(金)、19日(水)、20日(木)の3日間、10時~13時及び14時~17時

荒天の場合は中止の可能性があります。

2⃣走行ルート

・東京メトロ有楽町線 豊洲駅(豊洲センタービル) 〜 アーバンドックららぽーと豊洲

・マンション 〜 アーバンドックららぽーと豊洲

・マンション 〜 東京メトロ有楽町線 豊洲駅(豊洲センタービル)

さらに詳しい時間、走行ルートはマンション側のプライベートを考慮したためか公開されておりませんでした。実際私が他のニュースサイトで確認できたルートは、豊洲センタービル~ららぽーと豊洲の往路約300mと復路約1100mでした。復路については工事個所エリアがあり、このエリアはドライバーによる手動走行を行っているそうです。

3⃣乗客について

発表によると、豊洲エリアのマンションにお住いの約50組を対象にしているとのこと。乗車料金については発生していないとのこと(私が直接現地でスタッフの方に確認を取りました)。

また、実証時間内は何度でも利用できるのですが、利用の際はスマートフォンのアプリで配車依頼をかけ、上記の乗降場所に自動運転で車両が配車され、自動運転で目的地まで乗車…という流れです。

4⃣主催企業

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)

大和自動車交通(以下:大和交通)

群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター(以下:群馬大学)

【今回の実証実験の印象】

前回取り上げた日の丸自動車とZMP社の『世界初のタクシー自動運転』と比較する方も多いと思いますが、そもそも上記にある通り、乗車料金については発生していない時点でタクシーではありません。ちょっと方向性が違うなというのが私の第一印象です。

その理由はそもそもタクシーではないという点と、実証実験期間中は対象とされるマンションの住人がアプリで配車依頼を行い、目的地まで乗車するという点。後述の際に詳しく分析していきたいと思います。

先日、大和交通(東京四社の一つ)へ概要の問い合わせをしてみたのですが、周知されていないのか担当の方からの返答は正直曖昧なもので、あまり関心がないのかなと感じてしまいました。

しかし実際には大和交通と群馬大学は協力関係にあり、5月には江東区の公道において自動運転レベル2に相当する実証実験を行っています。私の予想ですが、この時使われた車両と今回使用された車両は同じではないでしょうか(システムはバージョンアップ)。

 

そこにNTTデータが加わった今回の実証実験という見方になりますが、本社が豊洲センタービルという点は大きなチェックポイントだと思います。また、NTTグループ自体が自動運転技術のデータ取得に本腰を入れていることも伺えます。

こちらは豊洲センタービルの車寄せに現れた自動運転車両(トヨタ:アルファードを改造)です。江東区での実証実験もアルファードが使われていました。

【車両について】

トヨタのアルファードが使用されていますが、今回トヨタ自動車の関与はありません。また、ナンバーが群馬ナンバーであることから、車両の開発主導は群馬大学であることが想像できます。群馬大学は世界最大規模の自動運転試験コースを前橋市に新設しています。運行車両数は3台とのことです。

車両ルーフ部に大掛かりなセンサー・カメラ・アンテナが装着されています。

豊洲コンセプト委員会』なる組織が気になります。NTTデータも名を連ねています。

車内を撮影することはできなかったのですが、ロボット開発ベンチャー、ヴイストン株式会社のヒト型ロボット『ソータ』が設置されており、乗客とのコミュニケーションを図っています。

《参照動画》https://www.youtube.com/watch?v=DFCV578QGiA

以上のことを踏まえて【考察】でまとめていきます。

【考察】

では今回の実証実験の先に何を見据えているのか…ここからが私視点でのまとめになります。

公開されている走行ルートから読み取れるのですが、これは報道でも述べられていますが、近距離でのオンデマンド型移動サービスの提供を目指していることがわかります。正直走行ルートであるマンションの所在地も私にはだいたい想像できます。

面白いのは今回の対象の乗客として『豊洲エリアのマンションの住民』と限定している点です。マンションから豊洲駅とららぽーと豊洲を結ぶ…まるで住民用のシャトルバスです。

(タワー)マンションと駅を連絡するシャトルバスは存在していて、晴海にある某タワーマンションは新橋駅と連絡する形でシャトルバス運行を設けています。

そして『豊洲コンセプト委員会』の存在…豊洲エリアの魅力発信を意識していると感じられます。実際に豊洲エリアを散策すればわかるのですが、近年タワーマンションが数多く建設されています。されているのですが、夜間訪れると空室が目立っていることもわかります。

そこで勝手な想像ではありますが、豊洲に対してより大きな魅力を感じて移住を促す狙いが第一にあると思います。

そしてこのような近距離移動サービスは交通弱者に対しても有効です。駅と商業施設…生活には欠かせない施設であることも狙いの一つと考えます。確かに豊洲エリアは若い世代の流入も多いのですが、私がタクシードライバーとして対応をしていた時の実感として、老夫婦、あるいは三世代で住まわれている方々も多かったと記憶しています。「老後も住んでいたいな」と思わせる一つの政策なのではないでしょうか。

次に東京オリンピックとの関連ですが、自動運転レベル4での実装を2020年までに間に合わせたいとありますが、東京オリンピックは2020年の7月24日 ~ 8月9日です。間に合うに越したことはないのでしょうが、絶対ではない気がします。確かにメイン会場の一つである有明に隣接しているので、有明と豊洲を自動運転で結ぶという選択肢は技術アピールになると思います。

が、各方面から豊洲までの交通機関はそれほど充実しているわけではありません。

新橋から有明エリアを経由して豊洲が終点(2018年9月現在)の《ゆりかもめ》、それと《東京メトロ有楽町線》です。半ば陸の孤島と呼ばれることもある豊洲。オリンピックにおける人の移動の拠点としては若干頼りないかなと感じています。しかし駅に隣接しているバスターミナルは大きく、改良すればそれなりの対応はできそうなのも事実。住民との話し合いを中心に検討されるのではないでしょうか…やはり住民が主役なのです。これが私の今回の考察のメインです。

(陸の孤島とは述べましたが、実際には道路交通も含めて便利なエリアだと思います)

余談ですが、有明エリアを自動運転レベル4で結ばれるのは一つは東京駅(近辺を複数)、もう一つは本当に勝手な想像ですが羽田空港ではないかと考えています。意外と有明羽田間の道順は単純なのです。他にも案はあり水面下で検討されているのかもしれませんが…。

続いて大和交通目線での考察です。日の丸自動車とZMPとの共同運行と同じように、今回の自動運転車両の運転席には大和交通のドライバーが緊急対応のために備えています。

群馬大学との協力体制で自動運転の研究をしている以上、将来タクシーの自動運転化も視野に入れているのは間違いありません。その一つの根拠として「ソータ」が挙げられます。映像でわかる通り、ロボットによる接客をイメージしているのではないでしょうか。スマホがあればタクシーに乗れる時代です。必要最低限なコミュニケーションでよければロボット(AI)に対応を任せても不自然ではないでしょう。

では、タクシーの自動運転時代はやってくるのか…完全な自動運転は現状5年 ~ 10年では不可能に近いでしょう。トヨタ自動車が製造している『JPN TAXI』。利用されている方からも基本的な評判は上々で、トヨタの狙いがある程度合致していると言えます。

実はJPN TAXIには実際の道路状況データを収集する役割もあります。つまり縦横無尽に走るタクシーから現実の路面データを取得し、自動運転技術へのフィードバックに役立てようとしているわけです。トラック業界(日野自動車はトヨタグループ)にもこの動きはあるようで、高速道路を用いて長距離かつルートが限定的な運行からデータは取得しやすく、トラックドライバーの運転支援に大きく貢献すると予測されます。

以前、知人のドライバーがトヨタ自動車の関係者をお乗せしたそうで、実際にデータを収集してみたのでしょう「5年 ~ 10年では不可能だ」と述べられたそうです。

この「5年 ~ 10年では不可能だ」というのは自動運転レベル5(完全自動運転)でしょう。2020年に間に合わせたいのはレベル4です。東京オリンピックは世界中から観光客が訪れます。今回のような豊洲での取り組み、大手町 ~ 六本木のような取り組みのレベル4での完全な実用化が果たせれば世界に対しても大きなアピールになるでしょう。それを国が力を入れないということはないと思いますので、まずは指定された場所と場所を結ぶ自動運転の実装を楽しみにしつつ追いかけていこうと思います。

今回の豊洲エリアでの自動運転実証実験。対象となる乗客が住民だったことから地域密着型の自動運転であったと言えます。これは私が推奨しているニュータウンエリアでの運用とほぼ同じ内容で、その狙いもすぐ想像することができました。もちろん運用の条件はまだまだ狭く厳しいものがあるでしょう(例えば、マンションは十分なクルマ寄せスペースがあること)。しかし今後の都市開発においても一つの可能性を見出したことは間違いないと思います。