世界初の自動運転タクシー実証実験

2021年6月3日

【世界初、自動運転タクシーの実証実験】

8月27日(月)~9月8日(土)の期間、タクシー会社の日の丸自動車とロボットベンチャーのZMP社の共同主催による、世界初となる自動運転タクシーによる営業走行を実証実験という形で行われました。

私は9月7日(金)、大手町グランキューブに立ち寄ったところ、幸運にも日の丸自動車の富田社長よりお話を伺うことができたのでレポートをまとめたいと思います。

残念ながら乗客としての試乗は叶いませんでした(7月末で応募を締め切っていたとのこと)が、どの記事にも載っていない情報・元タクシードライバーだからこその見方もまとめられていますので、自動運転に興味がある方はご覧ください。

今回の実証実験で使用されているクルマ、トヨタのエスティマをベースにZMP社が開発した『RoboCar MiniVan』という車両です。エスティマを改造していますが、トヨタ自動車は一切関与していません。

また、アップした画像には『協賛・協力 三菱地所』『協力 森ビル株式会社』とあります。これは大手町(大手町グランキューブ)~六本木(六本木ヒルズ)間を設定するためには必要不可欠の存在で、日頃から日の丸自動車と取引関係にあることから、日の丸自動車側から協力要請をしたそうです。双方にとっても自動運転に携われるという点からも利点は大いにあると想像できます。

ちなみに、大手町グランキューブ及び六本木ヒルズは東京四社の一つである日本交通の専用乗り場として機能しています(六本木ヒルズは日の丸自動車との共同運用)。

【運用概要】

冒頭でも述べましたが、期間は8月27日(月)~9月8日(土)でした。

料金は1500円です。これは同じルートを通常のタクシーが走行しても2000円前後にはなりますので、料金は少し安いと言えます。特に六本木~大手町ルートは若干大回りをするので通常との価格差はさらに開きます。

1日4往復を1台で対応します。有事の際のスペアとしてもう1台待機しているのですが、この点は後ほど解説します(※)。実証実験に参加できた乗客は96組です。今後も実証実験の機会を増やす予定だそうですので、次は実際に試乗してみたいと思います。

【自動運転車両】

それでは今回の立役者であるクルマのお話に移りましょう。

まず印象的なのは車両四隅とフロントバンパーに取り付けられているセンサーです。イメージとしては大掛かりなソナーセンサーです。センサーは車体に付け加えられているので車幅と全長が少し拡大しています。それらとは別に、天井に360度識別が可能なセンサーが取り付けられています。これらのセンサーを用いて車両周辺をチェックしています。

ではセンサーだけで自動運転を実装しているのでしょうか?いいえ、実はカメラもついています。カメラは車内に取り付けられていて、全部で3種類設置されていました。

運転席と助手関のほぼ間に設置されている3つのカメラユニット。中央のユニットが双眼使用になっており、主に前方の車両や人、障害物等を認識、距離を把握する役割があるとのこと(スバル車のアイサイトのような形をしています)。

両サイドのカメラは、車内から見て右側が車線の認識、左側が信号(色・矢印の区別)を認識する役割があるとのことでした。ですので6つのセンサーと3つのカメラユニット(目は4つ)で自動運転を行うための情報を集めている…ということになります。

エスティマというミニバン、2列目のシートがキャプテンシートでしたので7人乗り…ということになります。結論から申し上げますと、利用できる乗客数は最大で5名です。

では、差分の2名は?

僕が今回の実証実験で一番度肝を抜かれたのがこの部分でした。運転席には日の丸自動車のドライバーが、助手席にはZMP社のオペレーターが乗車されるそうです。

これは万が一の緊急対応をドライバーが介入して行えるようにするための措置です。つまり手動でハンドル操作、アクセル、ブレーキ操作が行えるということです。このことから機械を人が支えている…という構図が成り立っています。また、法整備もされていないので現状クルマが動く以上はドライバーが運転席にいなければならないというのは極自然のことです。助手席ではZMP社が運行データの収集にも努めているとのことです。

このことから『自動運転レベル3(条件付運転自動化)』と言えます。自動運転と言えば無人のクルマが勝手に動いて~(レベル4以上)を想像しがちです。日本の、特に東京での自動運転は人もクルマも縦横無尽に動いていることからその危険性を指摘されていましたが、運転席と助手席に人を配置することにより先ずは突破口を開いたと言えそうです。

スライドドアも私は絶対条件の一つと見ています。セダンタイプのドア…ヒンジドアと言いますが、意外と自転車や原付バイクを巻き込む事故が多いのです。あるいは開いた時に横に止めてあった車両に『ドアパンチ』をしてしまうことも少なくありません。

その点、スライドドアなら縦に開きますので、自転車や原付バイクを巻き込んだり、他の車両にぶつけてしまうこともない…と判断されたと推測できます。

余談ですが、自動運転制御のコンピューターはトランク部分に設置されているため使用できず、実際5名が荷物を持参しながらの乗車は「ちょっと難しい」とのことでした。

【今後の展開】

富田社長から伺ったお話の一番の核となるのは今後の展開でした。

そもそも今回のプロジェクトは東京都からの助成も受けているとのことで、2020年のオリンピックに向けて間に合わせるために全力を尽くされていることが想像できます。

興味深いのは自動運転レベル4の実現に焦点を当てているところで、決して夢物語ではないことも伺わせます。

自動運転レベル4は『特定の場所でシステムが全てを操作』と定義されています。つまり『ある場所からある場所までの間を完全自動運転で走行』ということになります。

富田社長が東京オリンピックに対する現実的な構想が『東京オリンピック会場~各主要ターミナルなどの施設』あるいは『オリンピック競技施設間の自動運転による送迎』と言えます。

正に国の一大プロジェクトです。最近ではアウディが自動運転レベル3を実装した車両の開発に成功したと報じました(法整備が追い付いていません)。特定の場所(区間)のレベル3とは言え中身は完全な自動運転です。世界中で良くも悪くも話題性に上がることも増えた自動運転、日本発の成功へ期待は膨らむばかりです。

【個人的な見解】

さて、昔描かれていた未来図が現実味を帯びてきたと言える自動運転、もしかすると空飛ぶクルマも目前になるのかもしれません。ここで少し人と機械について触れてみたいと思います。

10年後には人に代わってロボットが対応する職種が数えきれない程現れると言われています。例えばレストランのスタッフ、歯科助手、銀行などの受付…など。一説には人が機械に仕事を奪われると唱えている方もいるほどです。

富田社長はタクシーの自動運転を「人手不足の解消への手段」と話されています。それはタクシードライバーの平均年齢に関係しています。みなさんのイメージでもタクシードライバーは高齢の人が多いとの認識だと思いますが、10年後は定年退職者も増えタクシードライバーが不足しているだろうという見解です。

大手町~六本木間を設定したもう一つの理由も『人手不足の解消』とのこと。特に夕方はどちらの乗り場もタクシーが不足してしまい、乗り場には利用客による長蛇の列ができているからです。特に六本木からの行き先が大手町という要望が多かったからとのことでした。

事実上、タクシードライバーVSロボットタクシーのゴングが鳴らされたと実感しています。

まだまだ自動運転には課題が多いでしょう。ですので人が対応するメリットも大きいはずです。

プロのタクシードライバーにはここを一番大切にしてほしいと思います。残念ながら今でも社会的地位は微妙な立ち位置で、私は乗務員、会社、そして利用客それぞれがそれぞれの立場で認識を改めないと、今後のタクシー業界は生き残れないと考えています。

そして東京での実証実験を経て実用化ができれば、郊外での運用はそれほど高いハードルではないと考えています。

最近まで私も逆の考えでした。人やクルマで溢れる東京での自動運転よりも、ニュータウン地域での実験の方が形にはしやすいのではないかと考えていました。

ですが東京オリンピックは2020年。レベル3での運用化が実現できることを楽しみに今後もタクシーと自動運転の在り方を追いかけていこうと思います。その先にタクシーと自動運転のバランスされた競争とそれぞれの役割を活かせる共栄が成されていることを願います。

(※)実証実験が始まる前、公にはされていなかった公道での自動運転テストが行われていたそうです。もちろん警察などの各国家機関には届済み。その際、特にタクシードライバーによる妨害、嫌がらせ行為が目立ち、本来なら2台で実証実験を行うところ、急遽1台を有事の際のバックアップ用として待機させることにしたそうです。

これにより実質、体験組数と取得データは半分になってしまったということです。今後も実証実験を適宜重ねてゆくとのことですので、過度な妨害や嫌がられせは謹んでほしいと思います。